他人の死、己の今日
人が死んだのに
嫌な空気が流れていた
スンっと並んでいただけなのに肩をドンっと押された
今日は夢じゃない
わたしの数十メートル先で
誰かの人生が終わろうとしている、終わったのかもしれない
胸がキュッとした
吐きそうだった
誰かが死んでも無関心な世界に
事故だったかその世界に耐えられなかったのかわからない
だけど死だけは現実だったのだろう
本当は泣きそうだった
迷惑だったかもしれないけど
1人で無の時間を過ごしたくなかった
知らないおじさんと来ないバスを来るのを諦めて隣駅まで取り留めない話をしながら歩いた
おじさんありがとう
でも駅には次の難関が待っていた
我先にと乗り込む電車
過呼吸になった
かつて会社に行く満員電車に耐えきれなくて
食欲のなくなる薬を処方され
ホームとホームの間で泣きながら乗っていた電車がフラッシュバックして過呼吸になった
嗚咽が止まらない
ハンカチを当ててゆっくり呼吸をした
ひとつ電車を見送ると十分に自分の周囲ににスペースが取れる電車がゲロみたいに押し出された人間も冷たい目で彼らを見ていた人間も過呼吸でパニックになってる人間も平等に迎えにきてくれた
普段乗らない電車の窓の向こうに大きな河が広がっていた
歩いている時おじさんがこの公園は電車から見ると桜が綺麗ですよね
と言っていた
一年以上乗っている電車、なのに、気が付かなかった
今年の春は電車の中で少し顔を上げてみよう